出産・育児のために仕事を休む間は、複数の公的な給付でしっかり収入がカバーされます。制度を知らずに損をしないよう、産休・育休のしくみと「もらえるお金」、そして受け取り方を少し工夫するだけで手取りを増やせるポイントを整理します。
出産・育児のための休みは、大きく「産休(産前産後休業)」と「育休(育児休業)」の2つに分かれます。産休は労働基準法、育休は育児・介護休業法という別々の法律にもとづく制度で、もらえるお金の出どころも異なります。
産前6週間(多胎妊娠は14週間)は、本人が請求すれば取得できます。産後8週間は原則として就業できません(産後6週間を過ぎ、本人が請求し医師が認めた場合のみ就業可)。雇用形態を問わず、正社員・パート・派遣・契約社員などすべての女性労働者が対象です。
産休が終わったあと、原則子どもが1歳になるまで(保育所に入れない等の事情があれば最長2歳まで)取得できます。父親・母親どちらも取得可能で、父親は子の出生後8週間以内に「産後パパ育休(出生時育児休業)」を別枠で取ることもできます。有期雇用の人も、一定の要件を満たせば対象です。
休業中は給与が支払われないのが一般的ですが、その代わりに次の4つの給付・免除で収入と負担がカバーされます。
| 給付・免除 | 内容・金額の目安 |
|---|---|
| 出産育児一時金 | 子ども1人につき50万円(産科医療補償制度の対象外の出産は48.8万円)。出産費用に充てるお金で、健康保険・国民健康保険どちらの加入者も対象。多くは「直接支払制度」で病院へ直接支払われます。 |
| 出産手当金 | 産休期間中、給与が出ない日について1日あたり「標準報酬日額の3分の2」を健康保険から支給(おおむね月収の約67%)。会社員などの健康保険加入者が対象で、自営業(国民健康保険)は原則対象外。 |
| 育児休業給付金 | 育休中、雇用保険から最初の180日は休業前賃金の67%、以降は50%を支給。給付金は非課税のため、額面67%でも手取りベースでは休業前の約8割相当になります。 |
| 社会保険料の免除 | 産休・育休中は健康保険料・厚生年金保険料が本人・会社ともに免除(申請制)。免除期間も保険料を納めた扱いになるため、将来の年金額は減りません。 |
賞与(ボーナス)にかかる社会保険料が免除されるのは、1ヶ月を超える育休を取得した場合です。ボーナス支給月を含めて連続1ヶ月超の育休をまたぐように計画すると、賞与から天引きされるはずだった健康保険料・厚生年金保険料(合わせて額面の約15%)が丸ごと免除されます。数十万円のボーナスなら数万円単位の差になります。
毎月の社会保険料の免除は「その月の末日を含む育休」が基本。加えて、同じ月の中で14日以上育休を取れば、月末をまたがなくてもその月が免除対象になります。短期の育休でも、月末や月内14日以上を意識して日程を組むと免除を取りこぼしません。
2025年4月から始まった出生後休業支援給付金では、子の出生後8週間以内に両親がそれぞれ一定期間育休を取ると、最大28日間、給付率が13%上乗せされ実質80%に。育児休業給付金は非課税で社会保険料も免除のため、この間は手取りベースで休業前の約10割をカバーできます。夫婦で協力して取るのが金銭的にも有利です。
育児休業給付金の額は育休開始前6ヶ月の賃金で決まります。復帰後に時短勤務で賃金が下がってから2人目の育休に入ると給付額も下がってしまうため、フルタイムの賃金水準のうちに育休を取る方が有利です。時短は育休のあとに、という順番を意識しましょう。
出産手当金・育児休業給付金は所得税・住民税がかからない非課税収入です。育休を取った年は課税所得が下がるため、翌年の住民税や、保育料・各種手当の所得判定が有利になるケースがあります。配偶者控除の対象になれる年もあるので、年末調整・確定申告で見落とさないようにしましょう。
年次有給休暇は付与から2年で時効消滅し、産休・育休のような労働義務のない期間中は消化できません。長期の育休中に有効期限を迎えると、使わないまま消滅してしまいます。時効が近い有給がある場合は、休業に入る前に消化しておくと無駄がありません。産前休業(出産手当金は日額の3分の2)の代わりに有給(100%支給)を充てれば、その日数分は満額を受け取れます。
産休・育休の収入減は、家計シミュレーションでも見落とされがちなポイントです。MoneyPiの「子ども何人育てられる?」では、産休・育休中の収入減も反映して家計を試算できます。